「洋服の首元のタグを痛がって着てくれない」「靴下の縫い目が少しでもズレると大泣きする」「ドライヤーや掃除機の音を聞くと耳を塞いでパニックになる」――。一方で、「転んで血が出ているのに全く泣かない」「冬でも薄着で平気な顔をしている」など、痛覚や温度に対する反応が非常に薄いケースもあります。
これらは単なる「神経質」「わがまま」「鈍くさい」といった性格の問題ではありません。脳が外部からの刺激を受け取り、適切に処理・調整する機能(感覚処理機能)の特性によって生じる「感覚過敏」や「感覚鈍麻」と呼ばれる状態です。
今回は、感覚の偏りが起きる背景を理解し、日常生活での負担を減らす工夫や、ポジリブミニでの感覚統合アプローチについて解説します。
1. 感覚過敏・感覚鈍麻とは何か?(脳のフィルター機能の特性)
人間は日々の生活の中で、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚という五感に加え、体の位置や筋肉の動きを感じる「固有受容覚」、バランスや傾きを感じる「前庭覚」を無意識に調整しながら過ごしています。
通常、脳は自分にとって不要な刺激(時計のカチカチ音、服が触れる感覚など)を自動的にカットする「フィルター」を持っています。しかし、発達に凸凹のあるお子さまは、このフィルターの働きに偏りが見られることがあります。
感覚過敏(刺激が過剰に伝わる):フィルターが薄く、周囲の音、光、肌触りなどの情報がダイレクトに脳へなだれ込んできます。大人が感じる何倍ものボリュームや鋭さで刺激を受け止めるため、身体的苦痛や恐怖につながります。
感覚鈍麻(刺激を感じにくい):フィルターが厚すぎて、強い刺激でないと脳に届きません。そのため、痛みや暑さ・寒さに気づきにくかったり、刺激を求めて体を強くぶつけたり、高いところから飛び降りるなどの行動(感覚探求)が見られたりします。
2. 日常生活でできる工夫と配慮(触覚・聴覚)
過敏さがある場合、無理に慣れさせようとして刺激に晒すことは、子どもの心に強いトラウマを植え付ける危険があります。刺激そのものを減らす環境調整が最優先です。
衣服の工夫(触覚過敏)
首元のタグは根元からきれいにリッパーやハサミで切り取ります。最初からタグがプリントされているシームレス(縫い目のない)肌着を選ぶのも効果的です。
靴下は裏返しにして履かせることで、つま先の縫い目が直接肌に当たるのを防げます。
洗濯洗剤や柔軟剤を無香料のものに変える、綿100%など本人が好む肌触りの素材で服を統一する配慮も大切です。
音の防衛(聴覚過敏)
外出先での人混みや大きな音が苦手な場合、防音用のイヤーマフや、ノイズキャンセリングヘッドホンの着用を試してみます。
事前に「今から掃除機をかけるよ」「3秒後に音が鳴るよ」と見通しを伝えるだけでも、驚きによるパニックを軽減できます。
3. 周囲(保育園・幼稚園や外出先)への伝え方
感覚の困難さは目に見えないため、周囲の大臣から「甘え」「我慢が足りない」と誤解されやすい傾向があります。
「痛みに似た不快感」として説明する 「服のタグがチクチクして痛くて耐えられない状態です」「大声が耳の奥で割れるように響いてしまいます」と、感覚の辛さを具体的な痛みに例えて伝えると、園の先生方にも理解してもらいやすくなります。
園生活での例外的な配慮をお願いする 指定の制服が着られない場合は体操着での登園を認めてもらう、給食の時間が苦痛ならパーテーションを置いてもらうなど、園側と相談しながら無理のない落としどころを探っていきます。
4. ポジリブミニでの感覚統合遊びを通じたサポート
児童発達支援事業所 ポジリブミニでは、作業療法士をはじめとする専門スタッフが、感覚統合の理論に基づいた療育を行っています。
感覚の土台を整える運動遊び 大型ブランコやすべり台(前庭覚)、トンネルくぐりやトランポリン、重いクッションの押し引き(固有受容覚)などを通じて、脳に心地よい刺激をたっぷりと入力します。感覚の土台が満たされることで、触覚や聴覚の過敏さが自然と和らいでいくケースが多くあります。
様々な感触に安心して触れるステップ スライム、小麦粉粘土、泡、水遊びなど、多様な素材を使った感触遊びをスモールステップで提供します。決して無理強いはせず、まずはスプーン越しに触る、スタッフが触っているのを見るなど、自分のペースで触覚の経験を広げていきます。
